11.72026
ロシア、JTの一時管理を7法人に拡大 製造から流通・管理関連へ、日本政府は撤回要求
ロシアのプーチン大統領は11月6日、日本たばこ産業(JT)グループのロシア現地法人3社を新たに一時管理の対象とする大統領令第832号に署名した。前日の11月5日にも製造関連会社4社を指定しており、対象は計7法人に拡大した。
今回の追加措置では、製造拠点に続いて輸入・流通、経営管理、持株会社としての機能に関わる企業群も対象となった。
日本政府は11月5日の最初の措置についてロシア側に抗議し、撤回を要求している。JTは現地事業への影響や今後の対応を調査している。
JTIロシアなど3法人を追加指定
11月6日付大統領令第832号が追加したのは、次の3法人が発行する株式・出資持ち分だ。
| 法人 | 一時管理の対象 |
|---|---|
| ペレスラヴリ・タバク(株式会社) | 株式100% |
| JTIロシア(有限責任会社) | 出資持ち分100% |
| JTIイノベーション製品(有限責任会社) | 出資持ち分100% |
いずれも、ルクセンブルクのJTI Investments Sarlが保有する株式・持ち分が対象となった。
一時管理先には、前日の措置と同じ株式会社「プロムイシュレンヌィエ・アクチーヴィ(Promyshlennye Aktivy)」が指定された。
インタファクス通信は11月7日、追加3法人について、ロシア事業における輸入、経営管理、持株会社などの機能に関わる企業群と説明した。
RBCも、JTIロシアとJTIイノベーション製品が、たばこ製品の卸売事業に関わる法人だと報じている。
製造会社を保有する企業にも対象が拡大
前日の11月5日付大統領令第817号で対象となったのは、次の製造関連4法人だった。
- ペトロ:サンクトペテルブルクのたばこ製品工場
- JTIドンスコイ・タバク:ロストフ・ナ・ドヌーのたばこ製品工場
- JTIエレツ:リペツク州のたばこ原料加工施設
- クレス・ネヴァ:レニングラード州のたばこ原料加工施設
今回の追加措置には、グループ内の出資関係上の重要な変化がある。
第817号では、JTIロシアがJTIドンスコイ・タバクの出資持ち分99.9999%を保有する企業として登場していた。残る0.0001%を保有していたのが、ペレスラヴリ・タバクだ。
JTIロシアは、JTIエレツの出資持ち分18.85%も保有していた。
つまり、11月5日の段階では、この2法人は管理対象となった製造会社の出資者だった。
翌6日の第832号は、その出資者自身の株式・持ち分も一時管理の対象に加えた。
これにより、ロシア側の一時管理は工場を運営する会社から、出資や事業運営に関わる法人へと範囲を広げた。
管理先企業の正確な法人情報は公開制限の対象
一時管理先に指定されたのは、株式会社「プロムイシュレンヌィエ・アクチーヴィ」だ。
一方、ロシアのVedomostiは11月7日、同じ名称の株式会社が国内に少なくとも5社登録されていると報じた。
大統領令には管理先の名称は記載されているが、法人登録番号などは示されていない。
Vedomostiがロシア国有財産管理庁に問い合わせたところ、具体的な法人に関する情報は公開制限の対象だと説明されたという。
インタファクスも、管理先の法人識別情報が大統領令に記載されていない点を指摘している。
一時管理制度では所有者の権限を管理者が行使
今回の措置は、2023年4月25日付大統領令第302号に基づく。
同令は、ロシアやロシア企業・国民の財産権に対する外国側の措置などを背景に、外国関連資産を一時管理下に置く制度を定めた。
制度上、一時管理者は対象資産について所有者の権限を行使するが、資産そのものを処分する権限は認められていない。
一時管理の終了には、ロシア大統領による決定が必要となる。
このため、今回の措置は株式・持ち分の所有権移転を直接定めたものではない。一方、管理対象会社の経営に関わる権限には影響が及ぶ仕組みだ。
JTIロシアの2023年売上収益は4,800億ルーブル
追加対象となったJTIロシアは、ロシア市場で大規模なたばこ製品卸売事業を展開してきた。
RBCが11月7日に紹介した企業情報によると、JTIロシアの2023年の売上収益は約4,800億ルーブル、純利益は約470億ルーブルだった。
同じく追加対象となったJTIイノベーション製品は、2023年の売上収益が2億700万ルーブル、純利益が2億1,500万ルーブルだった。
これらは2023年の会計情報に基づく数値だ。
ロシアの企業登記簿について、RBCは11月7日の記事掲載時点で、一時管理者に関する変更が反映されておらず、各工場の代表者が従来どおり記載されていたとも報じた。
JTのロシア市場シェアは35.8%
JTが10月29日に公表した2026年度第3四半期決算レポートによると、同年1~9月のロシアでの総販売数量は599億本だった。
前年同期比では3.6%減少した。
同期間のロシア市場における数量シェアは35.8%で、前年同期から1.3ポイント低下した。
シェアはJTグループの内部データなどに基づく。
ロシア事業では、Winston、Camel、LD、Sobranieなどのブランドを展開している。
JTグループにとって、ロシアは販売規模の大きな市場の一つだ。
JTは影響を調査、日本政府は撤回を要求
JTは11月6日午前8時、ロシア事業に関する公式発表を行った。
同社は、前日の11月5日に署名された大統領令によって、製造会社4社が一時管理の対象となったと説明した。
詳細情報、今後取り得る対応、グループへの影響について確認を進め、開示すべき事項が判明すれば速やかに公表するとしている。
ロシア現地のJTI代表者も、RBCやVedomostiに対し、状況を分析して対応を検討していると説明した。
従業員や取引先を優先する方針も示している。
日本政府は11月6日、ロシア側への抗議を明らかにした。
木原稔官房長官によると、ロシアを訪問していた経済産業省と外務省の幹部が、駐ロシア日本大使とともにロシア政府へ抗議し、措置の撤回を要求した。
外務省欧州局長から駐日ロシア大使にも、同様の申し入れが行われた。
片山さつき財務相も同日の記者会見で、外交ルートを通じて撤回などを求めたと説明した。
これらの抗議は、11月5日付第817号による最初の措置に関するものだ。
その後、11月6日付第832号によって、管理対象はさらに3法人増えた。
東京株式市場でJT株が19.3%下落
最初の大統領令が公表された後、11月6日の東京株式市場ではJT株に売りが集中した。
同日の終値は6,269円となり、前日比1,500円安、率にして19.3%下落した。
制限値幅の下限となるストップ安水準だった。
11月7日付のテレビ朝日報道は、日本政府の抗議とともに、この株価下落を伝えている。
ロシアでの一時管理は、製造関連会社4社から、輸入・流通や管理機能に関わる3法人へ拡大した。
JTグループの現地事業運営と連結業績にどのような影響が生じるかは、今後の企業開示で具体化されることになる。
出典
インタファクス(2026年11月7日)
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RBC(2026年11月7日)
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Vedomosti(2026年11月7日)
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テレビ朝日(2026年11月7日)
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マネックス証券(2026年11月6日の株価)
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公式発表
ロシア大統領令第817号(2026年11月5日)
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ロシア大統領令第832号(2026年11月6日)
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ロシア大統領令第302号(2023年4月25日)
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日本たばこ産業(2026年11月6日)
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日本たばこ産業(2026年10月29日)
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日本財務省(2026年11月6日)
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